文章修行家さんに40の短文描写お題
65字以内の短文で情景描写修行。






01 : 告白 (64)
鳶色の瞳が見開かれた。何か言おうとして、絶句したまま凍る唇。 所在なげにパイプが揺れる様を、その動揺を、九龍は笑顔で見つめ ていた。

(皆守←葉佩)


02 : 嘘 (64)
血が伝う左手の剣も、わずかに引きずる歩き方も、疲労の見える顔 色も。
大丈夫だと振り向いた笑顔で、全て押し通せてしまうお前が 嫌いだ。

(皆守→葉佩/遺跡にて)


03 : 卒業 (63)
何度も門を見て、今に現れるだろう彼の姿を思い描いた。気がつけ ば、独り取り残されていた。
誰もいない校庭。今年の桜はまだ咲か ない。

(皆守→葉佩/2005年3月)


04 : 旅 (60)
手にした地図から顔を上げると、相棒は元気よく出発を告げた。砂 埃を巻き上げて、白い雲を追いかけて。
いつか夢見た異国の道を。

(皆守+葉佩/未来)


05 : 学ぶ (56)
遺跡の暗闇に見失わないように、置き去りにされないように。その ときはただ、父の背中を追いかけるだけで精一杯だった。

(葉佩/過去)


06 : 電車 (60)
屋上から身を乗り出した九龍は、ビルの間に見える車体を面白そう に数えていた。緑色が山手線、橙色が中央線。何が楽しいんだか。

(皆守+葉佩/學園風景)


07 : ペット (57)
叱られた犬が、お預けを食らっているような表情だ。奪ったカレー パンを差し出すと、根負けしたようにかじりついてくれた。

(皆守+葉佩/學園風景)


08 : 癖 (58)
ふわふわでくるくるでやわらかくて明るい色。手触りの良さに感動 して鼻先を埋めたら、思ったとおりラベンダーの香りがした。

(皆守←葉佩)


09 : おとな (61)
一挙一動に機嫌が左右される自分と、何事にも動じず明るく笑って 流してしまう親友。同い年だというのに、懐の広さは育ちのせいか?

(皆守+葉佩)


10 : 食事 (60)
「本当にお前は美味そうに食うな」
「お前のカレーの食いっぷりに は負けるよ」
テーブルの上の二つの皿は、ほぼ同時に空になった。

(皆守+葉佩)


11 : 本 (64)
ページをめくる指とか、文字を追う真摯な瞳とか、時折難しい顔を して考え込む表情とか、そんなものにすら見惚れる自分はどうかし ている。

(皆守→葉佩)


12 : 夢 (64)
植木鉢の割れる音がした。伸ばした手は届かなかった。薄紫が朱に 染まる。滲んで流れて落ちてゆく。誰かが呼んでいる。誰かが呼ん でいる。

(皆守)


13 : 女と女 (62)
女の子は恋愛話が好きだなと遠目に眺めて、改めて自分の現状に頭 を抱えた。世界が違って見えるのは、きっと眼鏡のせいだけじゃな い。

(葉佩/6th.Discovery)


14 : 手紙 (65)
見るからに美味そうなカレーの写真に、「帰ってきたら食わせてや る」と殴り書きの文字。早く帰ってこいって書かないのがお前らし いよ本当。

(皆守←葉佩/未来)


15 : 信仰 (59)
神という名は冠せられずとも、信じるものはそこにあるとばかりに 祈りを込める。空を仰いで目を細めて、己を照らす暁の太陽に。

(葉佩/過去)


16 : 遊び (64)
屋上に現れた転校生に、あくび混じりの声をかけた。こんなものは 戯れで気紛れで暇つぶしだ。どうせ彼もすぐいなくなる、それまで のこと。

(皆守)


17 : 初体験 (63)
境界線が、溶けて歪んで流れ出す。崩壊する自我の隙間を、侵食し てゆくラベンダー。呼吸を止めた一瞬に、全てが音を立てて弾け飛 んだ。

(皆守×葉佩)


18 : 仕事 (57)
土と泥と埃と黴、刃と鉄錆と硝煙と血。情熱と信念と痛みを抱いて、 背負った傷痕を強さに変えて、自分は今日も生きている。

(葉佩)


19 : 化粧 (54)
頬も唇も白く塗って、鏡に映った自分の顔に満足した。床に転がっ て呼吸を殺せば、あっという間に死体の出来上がり。

(葉佩/探偵喫茶)


20 : 怒り (65)
夕陽に映えたその顔は、穏やかな微笑のままだった。上等だ、一発 じゃ気が済まない。もう一度拳を握り締めて、九龍はにっこり笑っ てみせた。

(皆守+葉佩/Epilogue)


21 : 神秘 (64)
川、森、雪、機械、黄金、砂、溶岩。多種多様なこの場所の、最後 は何が迎えてくれるのか。大穴を覗き込んで、行くぞと九龍は声を かけた。

(葉佩/Last Discovery)


22 : 噂 (64)
聞こえてるくせに、肩を抱き寄せられた。気にしろよと囁いたら、 何がだととぼけられた。ああもう、こいつがこんなだから絶えない んだよ!

(皆守+葉佩)


23 : 彼と彼女 (63)
眺めているだけなら微笑ましいのだが、きっかけを思うと心の内が 騒ぐのは何故だろう。杞憂とはいえ、それでも気にせずにはいられ ない。

(真里野+七瀬+皆守)


24 : 悲しみ (62)
見つめる瞳は動かなかった。青みがかった薄い色素に、湛えられた それは静かな海のごとく。覗き込む者を飲み込まんとするかのよう に。

(阿門+葉佩)


25 : 生 (65)
抱きしめると温かかった。耳を寄せると鼓動が聞こえた。困ったよ うに揺れる瞳を見て、安堵に意識をさらわれた。縋りつく手も離せ ないまま。

(皆守←葉佩/2004年12月24日)


26 : 死 (65)
手を取りたかった。抱きしめたかった。泣きそうな顔を見て、自然 と微笑が零れ落ちた。これでいい。遺跡よ、早くこの運命を終わら せてくれ。

(皆守→葉佩/2004年12月24日)


27 : 芝居 (64)
親友だと彼は言った。そうだなと気のない返事をしたら、不満そう に唇を尖らせた。不満なのは俺だ。そんな簡単な単語で言い表せる ものか。

(皆守→葉佩)


28 : 体 (60)
意外に隙のない身のこなし、弾みをつけて起き上がるしなやかさ。 綺麗な指も長い足もその歩き方も、獲物を狙う肉食獣を思わせた。

(皆守←葉佩)


29 : 感謝 (60)
頼んでいない、救われたとも思わない、傷口が鮮明になっただけな のに。それでも渡されたあの写真に、何故か少しだけ涙が滲んだ。

(皆守/Last Discovery)


30 : イベント (61)
心地よいざわめきが、學園全体を包み込んでいる。今日は一思いに 殺してねと笑って振り返ったら、友人はアロマパイプを噴き出した。

(皆守+葉佩/學園祭)


31 : やわらかさ (60)
平等な態度と、分け隔てのない言葉と、全てを包み込んで許してし まう笑顔。誰を拒絶することもなく、振り撒かれるそれは武器だ。

(皆守→葉佩)


32 : 痛み (58)
ラベンダーは和らげるためなのか、逆に増幅させて刻みつけるため なのか。もはや慣れてしまったそれは、今日も鈍く胸を噛む。

(皆守)


33 : 好き (63)
真実味がないと呆れられたけど、それでも根底から湧き上がる感情 は抑えきれない。だから何度でも繰り返し、素直に口にしてしまう だけ。

(皆守←葉佩)


34 : 今昔(いまむかし) (61)
通りがかった校門は閉ざされていたが、あの頃感じた閉塞感はなか った。後輩たちの声がする。見上げる空に、雲はゆっくり流れゆく。

(皆守/未来)


35 : 渇き (64)
すぐそこにある。けれどまだ届かない。あと少し、もう少し。せり 上がる焦燥、必死で伸ばした指の先。欲しいものは、本当に欲しい ものは。

(皆守→葉佩)


36 : 浪漫 (61)
誰も見たことのないものを、ただひたすら追い求める。職業病かな と笑う彼に、お前らしいよと肩をすくめて、笑い返して首を振った。

(皆守+葉佩/未来)


37 : 季節 (61)
風は冷気を含み、樹木は葉を落とし、落日はどんどん早くなる。巡 りゆくもの、変わりゆくもの。時間が止まればどんなにいいだろう。

(皆守/學園風景)


38 : 別れ (64)
落ちた雫に目を見張って、肩を抱いて慰める。
「必ず帰ってくるか ら」
それでも拒むように首を振る仕草が、ラベンダーの香りを連れ てきた。

(皆守+葉佩/2004年12月31日)


39 : 欲 (59)
底は暗く見えず、果ては深く尽きず、ただどろどろと渦巻いて己を支配 する。守りたい、手に入れたい、閉じ込めたい、壊したい、そして。

(皆守)


40 : 贈り物 (64)
呪いからの解放も、人と人との繋がりも、かけがえのない思い出も、絶 え間のない明るい声も。ここに溢れる全ての笑顔は、あのとき彼がくれ たもの。

(天香學園)




20070428〜0506up


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