木乃伊は暁に再生の夢を見る6th. Discovery #3 |
保健室で薬をもらい、休んでゆくといいと言った瑞麗に甘えて、九龍は五時限目を保健室で寝て過ごした。おかげで少し気分も良くなったようだ。 「君が風邪とは珍しいな、怪我はよくしているようだが」 「う、ご迷惑かけます」 語尾に咳が混じり、鼻が詰まって声もおかしい。ううう風邪なんて久しぶりだよ、侮れないな新宿の秋の夜。 「早退しなくても大丈夫か? 風邪には安静が一番だぞ」 「いや、もうあと一時間だけなんで大丈夫です」 心配そうな瑞麗に笑いながら、九龍は次の地理を思った。宿題は出ていたが、授業自体は寝ていても問題ない時間だ。 ベッドから起き上がり学ランを羽織ったところで、保健室のすぐ外をばたばたと通り過ぎる足音がした。あっちだ、などと数人の騒ぐ声。 「……なにやら今日は朝から騒がしいようだな」 「ああ、ツチノコが出たって噂ですよ」 「ツチノコ?」 今知った、とばかりに瑞麗が目を丸くする。 「確か日本古来より存在する幻の生物だったな。それにしてもこの學園は何かと事件が起こるから、閉鎖空間のわりに退屈する暇もない。特に、誰かさんが転校してきてからは」 なあ葉佩、と瑞麗の切れ長の目が見つめてくる。責めているわけではなく、ただ興味深そうな光を浮かべた視線だったが。 「……やっぱり、俺のせいですかね」 知らず、苦笑が漏れた。ふ、と瑞麗が笑う。 「君は自分が引き金であることを、しっかりと認識しているようだな。だが悲観することはないぞ、君だって事件を起こそうとしているわけではないのだろう?」 「もちろんですよ」 九龍の言葉に満足そうに頷いて、瑞麗は煙管を弄んだ。 「まあ、また何かあれば来るといい。ゆっくり休め、無理はするなよ」 「はい、ありがとうございました」 ドアを閉める前に一礼して、九龍は保健室を出た。教室へ戻る階段を上がりながら、咳をしてふと思い出す。そういえば、今夜は七時に雛川と約束をしていた。切羽詰った相談でなければ、日を改めてもらった方がいいかもしれない。先生に風邪うつす心配もあるしなあ。 「おい、一年の奴が廃屋の方でツチノコを見たってよ」 「まぢかよッ」 すれ違う男子生徒たちが、大急ぎで階段を下りてゆく。短い休み時間の間も、ツチノコを捕まえようと學園中が大騒ぎのようだ。ホント元気な学校だなとそれを見送って、踊り場に立つ着物姿の生徒に気がついた。真里野だ。 「先刻は邪魔が入ったな」 言って口元に笑みを刻み、ゆっくりと歩いてくる。 「拙者の用件は簡単至極。先刻も言ったと思うが、今宵《墓》の奥にて手合わせを願いたいのだ。お主の噂を聞くにつけ、是非ともその腕前が見たくなってな。もしお主の腕前が噂どおり本物であるならば、待ち受ける化人と罠を越えて拙者の下までたどり着けるはず。どうかな? 拙者の申し出を受けてもらえぬか?」 明らかに挑戦状を叩きつける勢いで、真里野はその片目を九龍に向けた。えーと、今夜じゃないと駄目かなそれ。そう思いながらも、まあいいかと九龍は頷いた。少々の風邪くらいは平気だろう。それに、新しい扉が開く機会を逃がすわけにもいかない。 「……自信があるということか?」 「風邪気味だけどね」 「なるほど」 肩をすくめた九龍に、真里野は眼光鋭く睨みつけてきた。体調不良でも勝つ自信があるのかと、甘く見られた怒りを込めるように。 「では、今宵暮六ツ半―――夜の七時に《墓》の奥で待っておる」 「……七時?」 繰り返して、九龍は目を見開いた。雛川の約束と同じ時間ではないか。ああ、風邪じゃなくても今日は先生の手作りスコーンを諦める運命だったのか……。 「別に仲間を連れてきても構わぬぞ、これは死合いゆえ。お互い正々堂々と悔いの残らぬよう遣り合おうではないか」 「しあい、ねえ。了解した、そういうことなら観客として連れてゆこうではないか」 真里野の口調を真似て、九龍は笑ってみせた。ふ、と真里野も笑う。 「では、今夜。それでは御免」 軽く一礼をして、真里野は階段を上がってゆく。腰の木刀を眺めながら、《執行委員》であるからには侮れないんだろうな、とぼんやり考えた。 「九龍クンッ」 元気な声に顔を上げると、八千穂が階段を下りてくるところだった。何故かその手には金属バットが握られている。あ……明日香ちゃん、まさかそれでツチノコ殴るつもり? 「風邪は大丈夫? ん、どしたの真剣な顔しちゃって。わかった、ツチノコのこと考えてたとか。月魅や皆守クンはやめておけって言うけど、捕まえないまでも見てみたいよね!」 にこにこと笑う八千穂に、真里野のせいで張り詰めていた緊張がほぐれてゆく気がした。彼女は無意識なのだろうが、そういうところに九龍はいつも救われていると思う。ああもしかして俺って明日香ちゃんのこと好きなのかな、そんな疑問を抱いてしまうほどに。 「なんたって謎の生物だもんね! 謎を知りたいと思うのは、人間の本能だと思わない?」 八千穂の覗き込むような笑顔に、九龍も笑顔で同意する。好きだという実感はあるが、それを恋愛感情とするには決定的な何かが足りないような気もする。そう考えたとき。 「泥棒だァァァッ、誰かそいつを捕まえてくれ!」 突然、上から怒鳴り声が降ってきた。 「そいつ、うちの教師じゃないぜ!」 「きゃァァァ!」 なにやら大騒ぎする声が、次第に近づいてくる。 「先生じゃないって……あ、もしかしてこの前ヒナ先生がホームルームで言ってた不審者とか?」 「え、校舎の中に? 大胆な不審者だな」 顔を見合わせたとき、ひらりと長身が階段を飛び降りてきた。 「ゴメンよお嬢ちゃん」 すり抜けざまよろめいた八千穂に軽く声をかけて、ふと隣の九龍に目を向けたその男は。 「鴉室さん……」 「ん? 少年、君はいつぞやの」 革ジャンに派手なシャツ、オレンジ色のサングラス。強烈に印象に残る宇宙刑事こと鴉室探偵に、九龍は呟いて苦笑した。ああ、これは確かに不審者だ。 「おいッ、こっちだ! 階段を下りてったぞ!」 「ま、マズイ! じゃあな、少年!」 バーイ、と軽い挨拶を残すと、鴉室は階段を駆け下りていった。そいつを逃がすな、と生徒の声がする。なんか泥棒とか言ってたっけ、一体何しでかしたんだあの人。 「九龍クン、追いかけようッ!」 八千穂が促して、九龍に金属バットを差し出してくる。 「不審者が襲い掛かってきたらこれ使って!」 ……ツチノコ用じゃなかったのか、これ? 受け取って急かされてしまった九龍は、とりあえず泥棒として捕まえてみるか、と階段を一気に飛び降りた。鴉室の姿を捜すと、図書室の向こうに駆けてゆく派手な背中。 「あそこ!」 八千穂が言うと同時に、九龍も走り出した。が、突然図書室のドアが開いて。 「ええっと、まずはD組から本を回収して……」 「月魅、危ないッ!」 出てきた女生徒が振り向いて、え、と驚きの表情を作った。七瀬の姿を認めたときには、九龍も止まることができなかった。避けられず、正面からぶつかる。 ごん、と衝撃がきた。ドサドサと本の落ちる音がした。勢いでもつれ合うように七瀬を押し倒した九龍は、固い床に倒れた自分を感じた。 「ちょっと、大丈夫二人とも?」 ぶつかったときに頭を打ったのか、くらくらと世界が回っている。ああ、これ漫画だったら頭上で星が踊ってるよ。そんなことを思いながら、九龍は瞬きを繰り返した。うまく焦点が定まらない。 「九龍クンッ、いつまでも倒れてないで! 逃げられちゃうよ! 月魅はあたしが見てるから、早くあいつを追いかけて!」 了解、と言おうとして声が絡んだ。げほげほと咳が出た。咳だけではなく、なんだか頭痛がする。身体がふらふらする。風邪が悪化したのだろうか。 無造作に転がった《H.A.N.T》を視界の端に認め、起き上がって拾い上げる。そのまま何か言っている八千穂の声を背に、九龍は再び鴉室を追って駆け出した。 ああ駄目だ、なんか足がもつれるような気がする。ぶつかったダメージ大きかったのかな、後で七瀬ちゃんに謝らないと。 げほ、ともう一度咳をして、九龍は廊下の突き当たりで足を止めた。物置になっている狭い場所で、息を切らして鴉室を捜す。確か、こっちに来たはずなのだが。 「だ〜れだッ」 刹那、視界が真っ暗になった。誰かが後ろから、覆い被さるように目隠しをしている。もちろん誰かは既にわかっていたが。 「なんつってな。おっと動くなよ、騒がれると面倒なんでな」 笑いながら言う鴉室に、九龍はとりあえず従順におとなしくしておいた。息を整えながら隙をうかがう。 「どうやらこっちに追ってきたのは君一人か。なかなかいい勘をしてるじゃないか。ここを抜け出すまで、ちょっとだけ付き合ってもらおう。安心しな、痛い思いはさせないから」 言って、塞いだ手とは逆の手が、抱きしめるように腰に回された。その仕草に一気に鳥肌が立った九龍は、振り向きざま後ろの男を思い切り蹴り上げていた。 「悪いけど、俺はそんな趣味ないですから!」 一撃でうずくまって呻いている鴉室を見下ろして、勢いのまま怒鳴りつける。そりゃ確かに俺は世間一般的な男らしい男の体格はしてないけど、女扱いは違うだろうが! 憤慨すると、また咳が出た。どうも喉がおかしい。 「な、なんつ〜馬鹿力……そんなに力一杯蹴るこたないだろ?」 情けない顔で見上げてくる鴉室に、九龍はふんと鼻を鳴らす。何か言ってやろうとしたときに、後ろから声がかけられた。 「そいつが校内で目撃されたっていう不審者か?」 振り向くと、皆守だった。 「離れていろ、あとは俺が引き受ける」 気だるそうに言って、鴉室から守るようにして前に出る。その顔を見上げた九龍は、ふと言いようのない違和感を感じた。なんだかいつもより、目線が高いのは何故だろう。 「おー、君はあのときの無気力高校生君」 「ん? なんだ、あのときのおっさんじゃないか。何してんだよ、こんな日中の校内で……人目につかないようにどっかに潜んで調査するだの何だの言ってなかったか?」 誰がおっさんだ、と呟いた鴉室は皆守の言葉に頭をかいた。 「いやそうなんだが、調べたい場所があったんで生徒が別のことに気を取られている間に調べようかと。ほら、あれだ。ツチノコ騒動。俺が広めたんだ、なかなか名案だろ?」 「おっさんが噂元だったのか。ちッ、人騒がせな話だ」 「あのな、俺だって思った以上に騒ぎが大きくなっちまって驚いてるんだよ」 ぼんやりと二人の会話を聞きながら、九龍はまた違和感を感じていた。皆守だけではない。気がつかなかったが、鴉室を見るのにも前より顔を上げなければならない気がする。……おっさん、そんなに背高かったっけ? 「そんなことより早く逃げた方がいいんじゃないか? じきにここを捜しに教師や生徒が来るぜ」 「見逃してくれんのか?」 「おっさんが捕まろうが捕まるまいが、俺には関係のない話だ。それに、《生徒会》や教師連中に事情聴取されるのもかったるいことこの上ないしな。お前も、見逃してやってもいいと思うだろ?」 半ばあくび混じりに言った皆守が、眠そうな目をこちらに向けている。ああ、と九龍は慌てて頷いて。 「いいんじゃないか、面倒だし」 言うと、皆守がわずかに目を丸くした。 「意外と話がわかるじゃないか、俺はてっきり反対するもんだと思っていたがな」 「へ? そうか?」 きょとんとして九龍も目を丸くすると、皆守が訝しげな、不思議そうな表情になった。鴉室が一人、納得したように腕を組む。 「いや〜うんうん、君たち若者の意見はよくわかった。そんなに俺のことが好きだとは」 「……」 皆守と九龍の呆れた視線には気づかず、にやりと笑って。 「じゃ、諸君。縁があったらまた会おう、またな、ベイビー」 以前会ったときと同じように軽く片手を挙げると、軽い調子で去っていった。 「まったく……とんだトラブルメーカーだぜ」 アロマを吐きながら、皆守がその背中を見送る。 「ただでさえ、肥後をそそのかしたっていう謎の男の件でゴタゴタしているときに……」 呟かれた独り言を聞きとめて、へえ、と九龍は意外に思った。それって、タイゾーちゃんが言ってた『仮面の人』のことだよな。お前、気になってたのか。 「それじゃ、もう俺は行くぞ? ダルいんで、今日は早退することにしたんだ。じゃあな」 「おう、またな皆守!」 手を挙げて笑うと、踵を返そうとしていた皆守がぎょっとして振り返った。しばらく九龍を見つめて、がしがしと頭をかいて。 「あー……お前は、俺のことを嫌ってるものだと思っていたぜ」 「へ?」 なんだそれ、と九龍は目を見張る。皆守は面倒くさそうに九龍を指した。 「そういやお前、気になってたんだが。教室に戻る前に、そこの鏡で髪や服を直した方がいいぞ。転んだみたいにボサボサだぜ?」 「ああ……うん、ありがと」 そうか、さっき七瀬ちゃんとぶつかったからな。思って九龍は髪をかき上げて、その仕草の途中で動きを止める。……あれ、なんだこれ。髪が……え? どうも妙な違和感の原因は、風邪のせいだと思っていた。声がおかしい、視界がふらふらする、身体がうまく動かない。急に悪化したせいだと思っていた。けれど。 ……髪が。髪が長いのは、気のせいか? 振り向くと、大きな姿見があった。あまり深く考えず、その前へ移動する。果たして。 鏡に映っていたのは、一人の女子生徒だった。 肩の上で切りそろえた柔らかな髪、大きめの丸い眼鏡、見慣れた天香學園のセーラー服。女生徒は、ぽかんとした表情でこちらを見つめている。 「……七瀬ちゃん?」 思わず呟くと、鏡の中の七瀬も同じように呟いた。え、と思って九龍は無意識に右手を伸ばした。同じように伸びる、鏡の中の七瀬の左手。―――え。 待て。ちょっと待て。 鏡に映っているのは七瀬だ。それは確かだ。そして、鏡を見ているのは九龍だ。それも確かだ。 「古人、曰く―――」 冗談のように七瀬を真似てみる。自分の頭蓋で反響するせいか、呟きは七瀬の声には聞こえない。が、目の前の鏡に映る、呟いた姿はどう見ても七瀬でしかありえない。なんだ、これは? 自分で、自分の頬に触れてみる。鏡の中の七瀬がそっくり同じ動きをして、手に肌の感覚が滑る。そのまま、つねってみる。当然のように痛みを感じる。嘘だ、と九龍は戦慄して、確かめるように自分の肩を抱いて、腕を抱いて、胸を。 「……う、うっそ……」 「おッ、おいッ! 何やってんだよ!」 珍しく焦ったように言ってくる、皆守の声も耳に入らなかった。九龍は両手で自分の胸をつかんだまま、凍りついて動けなくなる。手に伝わる柔らかい感触。違う、と一瞬にして青ざめた。ぞ、と血液が逆流したような気がした。―――身体が、自分のものではない。 「さっきのおっさんにどこか怪我でもさせられたのか? おい、七瀬?」 ―――決定的。 皆守の呼びかけは、がん、と鈍器で殴られたような衝撃だった。声がおかしいのは七瀬の声だったからで、視界が揺れるのは視力と慣れない眼鏡のせいで、身体がうまく動かないのはこれが己本来のものではないからで。 「み、みなか……皆守、俺……」 無意識に腕に縋りつこうとすると、彼は驚いて身を引いた。相手が七瀬だとしたらそれが当然の反応なのかもしれない。それでも拒絶に似たその仕草は、九龍である意識に衝撃を走らせた。 「違う……違うんだよ皆守! 俺は七瀬月魅じゃなくて、葉佩九龍なんだって!」 「は?」 皆守の眉が思い切り寄せられる。何を言ってるんだこの女は、とでも言いたげな表情で。 「……どういう意味だよ? おかしなこと言い出しやがって」 「だから、俺だよ! 九龍なんだよ!」 どう説明していいのかわからず、九龍は恐慌状態に陥っていた。ただ自分が葉佩九龍だと主張するしかなくて、半ば泣き声が混じっていたように思う。皆守はそれを冷めた目で見つめると、少しだけ困った様子でアロマを吐いた。 「よくわからないが、ノイローゼかストレスか? そういう話なら、瑞麗にでも相談するんだな」 「……皆守……」 いつもどおりの、友人の姿がそこにある。けれど紛れもなく『七瀬月魅』に対する皆守甲太郎は、今の九龍にはひどく遠く思えた。知らない人間のように思えた。 何を言えばいいのか。どうすれば信じてもらえるのか。言葉を紡ごうとして喉の奥に絡まって、喘ぐように息を吸い込んだとき、六時限目の始まりを告げるチャイムが鳴った。 皆守は立ち尽くしている『七瀬月魅』を一瞥すると、ため息混じりに背中を向けた。ふわりと残されるラベンダーの香り。 「俺は早退するからいいが、お前は早く教室に戻った方がいいんじゃないか。これからはせいぜい不審者には気をつけろよ。じゃあな」 いつもどおりの声、いつもどおりの挨拶。けれど全てに違和感を感じて、九龍は何も言うことができなかった。 ……ああ、そうか。 遠ざかる彼を無言で見送って、愕然としている自分に気づく。 たとえ何があろうと彼なら信じられる、彼なら信じてくれる。いつの間にか、そんなことを思っていた。いつの間にか、そこまで頼りにしていた。そばにいるのが当たり前で、その事実に気づくこともなく。 「……なんで、信じてくれないんだよ……」 呟くと、自嘲の笑みが漏れた。わかっている、それが普通だと。例えば皆守と七瀬が入れ替わったとして、七瀬が突然自分は皆守だと主張しても、九龍にはにわかに信じられないだろう。そういうことだ。そう、理性では納得できるのだ。―――理性では。 はあ、とため息をついて、九龍は改めて鏡を見た。そうだよな。これじゃどこからどう見たって、七瀬ちゃんなんだもんな。 とにかく、感情は追い払おうと思う。まずは保健室だ。この事態を信じて話を聞いてくれるのは、もう瑞麗しか思いつかない。 しかし、何故こんな現象が起きたのだろう。これも『呪われた學園』とやらの作用なのか。瑞麗が言うとおり、自分は何かしらの事件を招き寄せる引き金なのか。 うなだれたまま、九龍は保健室へ向かって廊下を歩く。その扉が見えたところで、一抹の不安が胸を過ぎった。 親友だと思っていた、皆守にも信じてもらえなかった。それでもし、瑞麗にも信じてもらえなかったら。 學園中の、誰からも信じてもらえなかったら。 世界の全ての人間が、七瀬月魅だと定めたら。 ―――自分は葉佩九龍ではなく、七瀬月魅になるのだろうか。 「……違う」 葉佩九龍である己を殺して、七瀬月魅になるしかないのだろうか。 「違う」 そもそも七瀬月魅の中にいる葉佩九龍は、葉佩九龍と呼べるのだろうか。葉佩九龍の身体を離れても、それは葉佩九龍だといえるのだろうか。それでは―――それでは今、七瀬月魅の中にいる自分は誰だ? 「違う!」 自我が揺らぐ。足元が傾く。息が詰まって、うまく呼吸できなくなる。 落ち着け、と九龍は自身に言い聞かせた。考えろ、と命令した。どうしてこうなったのか、何故こんなことになっているのか、まずその原因。 図書室の前で、七瀬とぶつかった。あの瞬間に、身体が入れ替わったのだとしたら。 そうだ、と九龍は顔を上げる。入れ替わったのだ。ならば、葉佩九龍の身体の中には七瀬月魅がいることになる。それはきっと、葉佩九龍が七瀬月魅の身体にいるよりも、酷なことではないだろうか。 そうだ、立ち止まっている場合ではない。早く元に戻らないと、今は葉佩九龍である七瀬月魅に危険が及んでしまう。ただでさえ問題視されている《転校生》が―――あ。 「真里野……」 思わず呻いて、頭を抱えた。今晩七時の約束はとりあえず延期するにしても、いずれにせよ彼との戦いは近いだろう。できるだけ早く、彼が焦れて手出しをする前に、自分が葉佩九龍として対峙しなければ。 決意した九龍は、保健室のドアに手をかけてしばらく躊躇した。どう説明すればいいのか、そのわずかな逡巡に瑞麗の声が届く。 「入りたまえ、葉佩だろ?」 「……」 一瞬、返事に窮した。勇気づけられて、思い切ってドアを開けた。部屋に入ると、振り向いた瑞麗がおや、と目を見開いた。 「誰かと思えば、七瀬ではないか。間違えてすまなかった。おかしいな……葉佩の氣を確かに感じたのだが」 「ルイ先生……」 その言葉に、九龍は少し本気で泣きそうになってしまった。何か気づいたのか、瑞麗が優しく促してくる。 「どうした? もう授業が始まっている時間だが、具合でも悪いのか?」 「ルイ先生、あの……俺、先生の言うとおり葉佩九龍なんです」 「……?」 「七瀬月魅の姿を持つ、葉佩九龍なんです。……身体が入れ替わった、って言ったら信じてもらえますか」 「……」 瑞麗は無言で九龍を見つめ、視線を足元に落とした。そこからゆっくりと頭まで動かすと、またしばらく見つめてから、ふむ、と煙管を叩いた。 「なるほど。ではやはり、私がさっき感じた葉佩の氣は間違いではなかったというわけか」 「……し、信じてもらえるんですか」 「ああ。こうして向き合うと視覚に捕らわれて不確かになるが、ちゃんと葉佩の氣もそこに存在するからな」 「よ……よか……」 よかった、と座り込みそうになった。胸の内にようやく安堵が広がって、知らず全身の力が抜けた。息を吐いている九龍に椅子を勧め、瑞麗は改めて話し始める。 「私の祖国である中国に伝わる道教の教えでは、魂魄―――つまり霊もそれを包む肉体も、氣という同じ物質から成り立っていると考えられている。霊と肉だけでなく、世の摂理や事象のことごとくも同じように氣によって成り立ち、万物はその氣の流れの中で隆盛を繰り返している。氣が病めば霊も肉も病み、氣が枯渇すれば死に近づく。この氣の流れの思想が人体における経絡であり、大地における風水と呼ばれるものだ」 煙管を吸った瑞麗は、息継ぎするようにそこで台詞を切る。九龍が頷くのを確認すると、少し微笑んで続けた。 「霊と肉の概念は様々だが、共通して言えることがある。霊と肉は結びついたまま、永久不変ではないということだ。氣が他と交じり合う、氣が肉体を離れる。憑依、霊媒、生まれ変わり。このような言葉を見ても、霊と肉は非常に流動的な土台の上に存在するとみていい。つまり君の身に起こっていることは、理解不能な現象ではないということだ。君たちの身体が元に戻ることも可能というわけだな」 「……それを、聞いて安心しました」 瑞麗の凛とした声が、心に染み入るようにして九龍を落ち着かせてくれる。そうだな、と瑞麗は呟いて。 「氣の共鳴が原因かもしれない。氣は特定の波を受けることで、本来結びつくべき場所とのつながりが不安定になることがある。それなら、再び共鳴を起こすことで変化が起きるかもしれない」 氣を共鳴させるって、具体的にどうすればいいのだろう。考え込んでしまった九龍に、瑞麗は再度微笑みかけた。 「まずは君の身体と入れ替わった七瀬に会ってみることだ。もしかしたら七瀬も君のように保健室に来るかもしれないが、そのときはすぐ知らせるから安心したまえ。入れ替わったときと同じ方法を試せば、あるいは元に戻れるかもしれない」 同じ方法。思い切りぶつかればいいのだろうか、と図書室前の事故を思い出してみる。 「それともう一つ、このことはあまり人に話さない方がいい。君を―――葉佩九龍を狙っている者が、この學園にはいるようだからな。何故君が狙われなければならないのか、理由はあえて訊かないが」 思わず苦笑して、九龍はあいまいに頷いておいた。などと言いながら、既に見透かしていそうな瑞麗の目が怖い。 「君の身体を借りているのが七瀬だとわかれば、今まで様子を見ていた者たちも襲い掛かってこないとは限らない。七瀬のためにも、私と君だけの秘密にしておいた方がいいだろう。誰かに話したか?」 「あ……はい、皆守に」 信じてくれませんでしたけどね。友人の背中を思った九龍は、無意識に唇を歪めていた。自嘲の笑みを浮かべようとして、失敗して、泣き笑いのような顔になった。 「……まあ、普通はそう簡単に信じてもらえないだろう。落ち込まなくていい」 驚いて瑞麗を見ると、切れ長の目が優しげにこちらを見つめている。そ、そんなに落ち込んでるように見えたのかな。 「とにかく早く七瀬を捜し出したまえ、まずはそれからだ。それに―――時間が経過すれば、取り返しのつかないことになるかもしれない」 「……元に戻れなくなる、ということですか」 静かな口調に、九龍も静かに尋ねた。そうだ、と瑞麗は肯定して。 「霊と肉が同じ氣という物質である以上、それが本来あるべき場所ではなくても、時間と共に交じり合い始めてしまう可能性がある。定着してしまえば……あるいは」 ざわり、と悪寒が走った。胸の内に落ちた小さな不安が、次第にどす黒く広がってゆくような気がした。考えない方がいい、と思った。 「まあ、何か変化があったらいつでも来るといい」 「……はい、ありがとうございました」 立ち上がって、深々と礼をする。ここに、自分を葉佩九龍だと信じてくれる人間がいる。それだけで、九龍は救われた気持ちになれた。 「再見」 ドアを閉める前に、ツァイツェン、と綺麗な北京語発音で瑞麗が告げる。謝謝ともう一度礼をして、九龍は保健室を後にした。 授業中のためか、校舎はしんと静まり返っている。いつもどおりの學園風景なのに、介する目が違うだけで、景色が全く違うように思えるから不思議だ。七瀬はこんな風に世界を見ているのだろうか。眼鏡って邪魔だな、ていうかどうもこのフレームが気になるな。そんなことを思いながら、七瀬が一番いそうなところ、図書室で足を止めた。 「七瀬ちゃん」 「葉佩さん―――?」 小さく呼びかけてみると、同じく小さな声がした。他人の耳で聞くと別人の声のように聞こえるのだが、今の自分を葉佩と呼ぶ人物は限られている。 「葉佩さん、こっちです。私です、七瀬です」 見回すと、どうやら司書室の中にいるようだった。曇りガラスのドアの窓に、ちらちらと黒い影が映る。 「廊下で葉佩さんとぶつかって、目が覚めたらこんな風に身体が入れ替わっていて……驚いてそのままこの部屋に入って鍵を掛けたんです」 では、まだ誰にも会っていないということになる。あのとき八千穂は逃げる鴉室に夢中だったし、彼女にそんな洞察力があるとも思えない。瑞麗以外、まだ誰にも知られていないとみていいだろう。ナイス七瀬ちゃん、賢い判断だ。 「なんで……こんなことになってしまったんでしょう。ずっと、このまま元に戻らなかったりしたら……」 「七瀬ちゃん……」 呟く声がどんどん沈んでゆくように思えて、九龍は胸が締めつけられるような気がした。 今は自分のものである、七瀬月魅の手を眺めてみる。細く美しく、優雅に本のページを繰るだろう柔らかい手。 葉佩九龍の手は、銃を持ち剣を振るい、命を奪う凶器と化す。自分が生きてきた傷痕だらけの過去を、これからも歩むだろう道なき道を、彼女に背負わせるわけにはいかない。 「七瀬ちゃん」 もう一度呼びかけて、九龍はにっこり笑ってみせた。いつも、葉佩九龍がそうするように。 「大丈夫、ルイ先生が言ってたよ。きっと元に戻れるって。先生も相談に乗ってくれてるし、きっと、絶対、大丈夫」 「……ありがとうございます……」 励ます言葉が伝わったらしく、扉の向こうで七瀬が微笑む気配がした。 「すみません、私ったら……すぐに悪い方に考えてしまって。まったくしっかりしなさいッ、月魅ッ!」 そうやって気合を入れるように自ら叱咤するのが、彼女が己を励ますいつもの方法らしい。が、声が男であるせいで、どうも朱堂のようなキャラに聞こえてしまう。そ、そうか、俺の身体の中身が七瀬ちゃんってことは、今の俺は傍から見たら正にすどりん系キャラになってるってことか。 「葉佩さん、私はここにある本を調べて何とか元に戻る方法を探し出してみます。何かわかったら連絡しますから、それまでは葉佩さんも私として行動して下さい」 「了解!」 とりあえずは駄目で元々、瑞麗が言っていたようにぶつかったときの行動を再現してみるのはどうだろうと考えた。しかし今はまだ授業中で、誰かが来るとややこしいことになるかもしれない。かといって放課後は校舎に残れないし、それならば今のうちに人目のつかない場所に移動した方が。 あれこれ考えあぐねていると、《H.A.N.T》がメールを受信した。そうだ、真里野とヒナ先生にメールしとかなきゃ。思いながら開いて、読んで、戦慄する。真里野からだった。 『今宵の約束、忘れてはおらぬだろうな? お主を《生徒会執行委員》として粛正すべく、《墓》の奥にて待っている。念のためお主が逃げ出さぬよう、拙者はお主の大切な者を預かっている。お主の担任である學園の清楚たる花を……。お主が来なければ、この花が真紅に染まり散ることになるであろう。そうしたくなければ約束の刻どおり、必ず拙者の下まで来ることだ』 「……」 無言で、九龍はその文字をなぞった。まるで約束を断ろうとしたことを見透かしたかのように、今宵七時、と件名が告げている。ヒナ先生、と呻く。なんで、と唇を噛む。関係のない人間を巻き込むような、そんな卑怯な手口を使う男には見えなかったのに。 駄目だ。この姿ででも、墓地の奥に向かわなければ。 「……七瀬」 呟いた声は、自分でも驚くほど低かった。いつも『七瀬ちゃん』と親しみを込めていた呼び名を、無意識に呼び捨てにしただけで、それは真剣さを増して耳に返ってきた。 「悪い、この身体でちょっと無茶なことするかもしれない。でも……でも、守るから。必ず、守ってみせるから」 「……葉佩さん……」 静かな怒りが伝わったのか、七瀬が息を飲むように呟く。九龍は《H.A.N.T》を握り締めて、安心させるように声のトーンを軽く上げた。 「心配すんな、必ず元に戻れるからさ。俺、このまま男子寮に帰るよ。七瀬もこっそり自分の部屋に戻ってくれ、授業が終わらないうちに出た方がいい」 「はい、わかりました。お互い元に戻れるときまで頑張りましょう、私の身体をよろしくお願いしますッ!」 「七瀬も、俺の身体をよろしくな」 笑顔で頷いて、大丈夫だ、と九龍は己に言い聞かせた。 自分が葉佩九龍であることは紛れもない事実。ならば葉佩九龍として、いつもどおり同等に戦うことができるはず。たとえ他人の身体でも、器ではなく精神の力で。 そう固く、強く信じて。 できるだけ七瀬を演じて七瀬らしく見えるように、九龍は校舎を後にした。 歩くたびに風が足を撫でて、どうも落ち着かなくて不安になる。スカートって寒い、女の子も大変だ、ていうか生足なんだよな七瀬。なるべくあれこれ考えないように歩いていると。 温室から、白岐が出てくるところだった。授業は既に半分終わっているが、中庭を通り、校舎に戻るようだ。目が合って、無視するのも何なので、軽く会釈をしておく。彼女は無表情のまま、ふと足を止めて。 「どうしたの?」 紡がれた言葉に、九龍は七瀬が授業半ばで寮に帰る言い訳を考えた。それとも、七瀬としてどこか不審なところでもあったのだろうか。少し焦ったが、続けられた名前は予想外のものだった。 「葉佩さん。いつものあなたらしくないけど」 「え」 少し不思議そうではあったが、こちらを見る目はいつもどおり変わりない。九龍はぽかんと口を開けて、思わず自分を指差した。 「白岐ちゃん、俺が葉佩九龍に見えるのか?」 「……一体どうしたの?」 それが当然であることのように、白岐はわずか首を傾げる。 「あなたの名前は葉佩九龍。それ以外の何者でもないでしょう?」 「……」 呆然と、九龍はその断言を受け止めた。 ふと、夕薙が白岐を「神秘的な女性」と評価していたことを思い出す。目の前の人間がどんな姿をしていようと、彼女には関係ないのかもしれない。彼女の目は上辺だけに捕らわれず、いつも本質を見つめているのかもしれない。よくわからないがその神秘的な力で、白岐は自分を認めてくれたらしい。 「……ありがとう」 「え?」 無意識に呟いた九龍の言葉に、驚いたように白岐が目を丸くした。初めて、表情を見せてくれたような気がした。 「ありがと、白岐ちゃん」 訝しげな白岐にもう一度笑って、七瀬を演じることもなく、じゃあまた明日と九龍は告げた。その透明な視線を背中に感じながら、一端寮の玄関を回って身を隠す。 瑞麗と白岐、それから七瀬。三人もの人間が、葉佩九龍を葉佩九龍だと言ってくれる。それだけで充分、改めて思うことができる。 自分は葉佩九龍だ。それ以外の何者でもない。それに。 それに何よりも自分自身が、自分を葉佩九龍だと信じて疑わなければいい。 誰もいないことを確かめて、九龍は男子寮に忍び込んだ。遺跡帰りの深夜みたいだと少し苦笑する。足音を殺しながら廊下を駆けて、ようやく自分の部屋に飛び込んだ。それだけで、わずかに息が上がっていた。 肉体には慣れない運動かもしれないが、操る精神がその方法を知っているからなのか、そんなに労せず身体は動く。七瀬が小柄で身軽なおかげもあるだろう。……でもこれ、絶対いつもと違う筋肉使ってるから、すぐ筋肉痛になりそうだな。 部屋に入って一息ついた九龍は、改めて自分の格好を見下ろした。身体も慣れないが服装も慣れない。特に、短いスカートがどうも頼りないのだ。 裾をつまんでみる。ひらひらと動かすだけで、風が通って寒くなる。すらりと伸びた生足はなかなかに魅力的だったが、自分のものだと思うと全てが半減した。 そりゃあさ、男としてはかなりの勢いで興味があるんだけどこの女体。けどこれ、俺が女になったわけじゃなくて、七瀬月魅になっただけなんだよな。七瀬に申し訳なくて何か試そうとかそういう気持ちも押し殺すしかないっつーの、ああもったいない。てか七瀬って意外とナイスバディなんだよ、気になってしょうがないんだよ揺れる胸とか……って一瞬でも邪なこと考えてごめん、悪い、許せ、七瀬! 着替えは禁止、トイレも禁止、と九龍は自らに言い聞かせた。後者のためになるべく水分も禁止だ。どうしようもなくなったら―――そ、そのときはそのときだ! まあでもお互い様か、と今は七瀬である自分の身体を思い、そういえば葉佩九龍は風邪をひいていたことを思い出した。あーと声を出してみて、喉にも鼻にも異常がないことを確認する。ああ、やっぱり病気は身体が患うものなんだな。 部屋にあるもので適当に食事を済ませていると、七瀬からメールが来た。タオルで顔を隠して自分の部屋に戻りました、という報告だった。顔隠しても学ランは思いっきり不審なんじゃ、九龍は苦笑しつつも返信する。その身体、今朝から風邪気味だったから。ちゃんと食べてあったかくして寝てね。 《H.A.N.T》で文字を打っている最中、やはりどうしても眼鏡が気になった。フレームが視界に枠を作り、邪魔なことこの上ないのだ。外すと何も見えなくなったので、ゴーグルを調節して眼鏡替わりに使うことにする。これなら慣れているし問題ない。 「あとは武器、か……」 送信して、《H.A.N.T》をポケットに入れる。MP5は反動が心配だが、しっかり固定すればまあなんとかなるだろう。問題は大剣だ。試しに持ってみたが、葉佩九龍のときでさえ重くて扱いにくい難点が、七瀬月魅になると尚更だった。持つだけで疲れてしまって、これが振り回せるとは思えない。 九龍は少し考えて、以前あの遺跡で拾っていた長槍を手にした。先に鋼製の矢じりがついていて、剣代わりにもなるし軽くて扱いやすそうだ。 新しい扉が開くからには、万全の態勢で挑まなければならない。それに、今夜は誰もバディとして誘うことができない。ちゃんと説明すればわかってもらえるかもしれないが、それでも。 セーラー服の上にベストを羽織る。ジッパーは開けたまま、ありったけの爆弾と弾薬を詰め込む。槍を背負って、ゴーグルをセットして、マシンガンを肩にかけて。 「……《宝探し屋》というより、ヤクザの跡取り娘だなこりゃ」 自分の姿を見下ろして、九龍は早くも脱力した。こうなったら化人をマシンガンで一掃して、キメ台詞を呟いてやろうと思った。
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